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福井地方裁判所 昭和37年(ワ)79号 判決 1963年12月03日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告は原告に対し別紙目録記載の不動産につきなされた同目録記載の根抵当権設定登記及び根抵当権移転登記の各抹消登記手続をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として、別紙目録記載の不動産は、原告の所有に属するものであるところ、右不動産については同目録記載のとおり訴外合名会社田辺商店を根抵当権者とする根抵当権設定登記がなされ、次いでその権利が被告に移転した旨の根抵当権移転登記がなされている。しかしながら、原告は訴外合名会社田辺商店との間に右の如き金円借用手形割引契約を締結したことはなく、また右訴外会社より手形割引を受けた事実もなく、従つて根抵当権設定登記手続をしたこともない。さらにまた被告が右訴外会社より前記手形割引契約を承継することに同意した事実もない。よつて、前記根抵当権設定登記並びに根抵当権移転登記(以下「本件登記」と略称する)は、いずれも無効であるから、その抹消登記手続を求めるため本訴に及んだ。と述べた。

(立証省略)

被告は、主文と同旨の判決を求め、答弁として、別紙目録記載の不動産が原告の所有に属すること、右不動産について本件登記がなされていることは認めるが、その余の原告主張事実は否認する。訴外合名会社田辺商店と原告との間の金円借用手形割引契約書は紛失して現在見当らないけれども、該契約及び本件根抵当権設定登記はいずれも適法になされたものであり、昭和三十六年八月十一日被告が同訴外会社より右契約を承継した際に、原告が承諾書を作成した事実はないが、被告は右契約を適法に承継したものであり、かつ右承継と同時に被告は同訴外会社より同日現在の確定債権額金五〇万円の債権譲渡を受け、その旨譲渡たる同訴外会社より原告に対し通知がなされているのであるから、原告の本訴請求は失当である。なお、本件の金円借用手形割引契約に基く割引手形は現在被告の手許にないけれども、右は被告の権利に影響を及ぼすものではないと述べた。

(立証省略)

別紙

目録

(不動産の表示)

福井県坂井郡丸岡町本町一丁目三〇番地

一、宅地 三二坪三合八勺

同所 三〇番地

家屋番号 新町二番

一、木造瓦葺二階建店舗 一棟

建坪 一二坪七合五勺

二階 一二坪

附属建物

木造杉皮葺平屋建居宅 一棟

建坪 六坪

(根抵当権設定登記の表示)

福井地方法務局丸岡出張所昭和三一年六月一〇日受付第一五三一号をもつてなされた原因昭和三二年五月一四日金円借用手形割引契約に基き同日根抵当権設定契約、根抵当権者金沢市博労町三四番地合名会社田辺商店、債権極度額金五〇万円、特約手形金支払を遅延したる場合その期日の翌日より弁済当日迄金百円に付一日金四銭の割合による損害金を支払う約の根抵当権設定登記

(根抵当権移転登記の表示)

右主張所昭和三六年八月一五日受付第二六七七号をもつてなされた原因同月一一日手形割引契約承継、取得者石川県石川郡野々市本町ヲ二〇番地中野芳明とする根抵当権移転登記。

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